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労働の問題 Q&A

Q1 : 賃金を会社から一方的に減らされてしまったのですが,このようなことは許されるのでしょうか。

A :
原則として,使用者が一方的に賃金を切り下げることはできません。ただし,就業規則の変更が適正に行われた場合(変更内容の合理性,労働者の過半数代表からの意見聴取,労基署への届出,労働者への周知等が必要です。),労働組合との間で労働協約が締結された場合(一定の限界はあります。)には,賃金の切り下げが行えることがあります。また,降格による減給については人事権の行使として許される場合がありますが,単なる配転によって賃金を切り下げることはできません。

Q2 : 勤務先の会社は残業が多いのですが,残業代は既に基本給等に含まれていると言われ,残業代がもらえません。本当に残業代は請求できないのでしょうか。

A :
基本給等の中に残業代が含まれていると認められる場合は,時間外,深夜労働に対する割増賃金部分(残業代)と通常の労働時間に対する賃金部分が明確に区別できる場合に限られますので,そのような場合でなければ,残業代が基本給等に含まれるという会社の主張が認められることは少ないです。
また,固定の残業代が支払われている場合でも,実際に固定残業代以上の残業が行われた場合は,差額を請求が可能です。更に,役職手当,営業手当などの名目で支払われているものが残業代に相当するという主張を会社がした場合であっても,そもそも,手当の実質が職責や職務の遂行自体に対する対価である場合は認められませんし,仮に残業の対価といえる場合であっても,実際に行った残業代がこれらの手当よりも多ければ,その差額の請求が可能です。

Q3 : 残業代を請求するにあたっては,そのような証拠が必要でしょうか。

A :
タイムカードで時間管理を行っている会社ではタイムカードが有力な証拠となります。
タイムカードがない場合,パソコンソフトの立ち上げ時刻を記録したもの,スイカの利用明細,電子メールの送受信時刻を証拠とすることがあります。また,労働者本人の作成したメモであっても,毎日定期的に付けているものであれば,証拠になることがあります。

Q4 : 職場で性的な言動をされたのですが,どのような言動がセクハラになるのでしょうか。

A :
男女雇用機会均等法におけるセクハラは,労働者の意に反する性的言動が対象であると考えられていますので,あなたが嫌だと思う性的な言動であれば,セクハラに該当し,会社に対して必要な処置(調査,防止策等)をとるよう求めることができます。
ただし,これは男女雇用機会均等法における定義であり,民事上,会社やセクハラをした相手に対し不法行為に基づく損害賠償を請求するには,セクハラが社会通念(常識)からみて相当性を逸脱していることが必要となります。この判断は微妙なケースもおおいです。参考までに裁判で相当性を逸脱していると判断された例としては,@食事の際に股や太ももを撫で回し「家で待っている愛人が欲しい」と言った事案,Aプライベートな事項を時々質問し,トイレや更衣室の前で待伏せをしてつきまとい,「一緒に帰ろう」「飲みに行こう」と言いつつ勤務時間中に身体をすり寄せた事案があります。

Q5 : 職場で上司に厳しく叱責されたのですが,これはパワハラにあたらないでしょうか。

A :
注意や叱責については,業務改善・指導を目的にしたものもありますので,叱責されただけでパワハラにあたるとはいえません。
業務上の必要性に基づいていないもの,退職強要目的など社会的に見て不当な動機・目的に基づくもの,通常甘受すべき程度を越える不利益を与えるものが違法な行為として,パワハラにあたります。例としては,直接又は間接の暴力,言葉やメールによる人格の否定・名誉毀損・侮辱,隔離・仕事外し,業務上関係のない無意味な作業や遂行不能な過度の業務の強要等があります。

Q6 : セクハラやパワハラの証拠はどのように用意したらいいのでしょうか。

A :
録音,録画,写真等の活用が重要ですが,セクハラやパワハラがある度に詳細なメモをとっておくことも重要です。

Q7 : 明日から会社に来る必要はないと言われ解雇されたのですが,このようなことが可能なのでしょうか。

A :
解雇には正当事由が必要であり,これを欠く解雇は解雇権濫用として無効になります。解雇予告手当として1ヶ月分の給料が支払われたとしても同様です。正当事由があるか否かの判断はケースバイケースですが,能力不足を理由とする場合に教育訓練や配置返還等をまったく行っていない場合には正当事由があるとは言いにくいです。また,非違行為(落ち度)を理由とする場合でもその落ち度は解雇に相当するほど重いものである必要があります。会社の業績不振を理由とする整理解雇の場合,@人員削減の必要性,A解雇回避の努力,B人員の合理性,C説明協議義務の履行といった要件を満たす必要があります。
ただし,いずれの解雇であっても,退職届を出してしまっている場合,退職届が詐欺,強迫,錯誤等によって出されたことを証明できない限り,解雇の無効を主張できませんので注意して下さい。

Q8 : 労働審判という制度があると聞いたのですがどのような手続きでしょうか。

A :
労働審判は,地方裁判所で行われる個別の労使関係紛争(残業代の請求や解雇の無効の主張等)について調停(話合い)による解決を試みると同時に調停が成立しない場合に原則として3回(通常1ヶ月に1回手続きが行われますので,申立てをしてから3ヶ月)以内に裁判所が労働審判を出す手続きです。裁判官1名のほかに労働関係について専門的な知識経験を有する中立の審判員2名(経済団体,労働者団体から各1名ずつ選ばれます。)が手続きを行います。
労働審判については,使用者,労働者の当事者どちらかからも異議が出なければそのまま確定しますが,異議が出た場合は,通常の裁判に移行します。