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交通事故 Q&A

Q1 : 加害者が自動車の交通事故による損害賠償請求は誰に対して行ったらよいのでしょうか。

A :
法律上損害賠償責任を負っているのは,まず,交通事故の加害者である自動車の運転者になりますので,運転者に対し請求を行うことができます。加害者が使用者である会社等の自動車を運転していた場合,使用者責任に基づき会社等に対し請求を行うことができます。また,自動車の保有者(所有者等)が別にいる場合,人損については,運行供与者責任に基づき請求を行うことができます(物損については,運行供与者責任に基づく請求はできません。)。
もっとも,相手方が任意保険に加入している場合,示談代行で任意保険会社が交渉の窓口になることが多いです。

Q2 : 相手方には,どんな損害の賠償が請求できますか。

A :
主な人的な損害(人損)としては,治療関係費,休業損害(入通院で会社を休んだことによる損害等),入通院慰謝料(入通院の期間に応じた慰謝料),後遺障害が残った場合の後遺障害による慰謝料(後遺障害等級に応じた慰謝料),死亡の場合の死亡慰謝料,後遺障害が残った場合の後遺障害による逸失利益(事故がなければ得られたはずの年収(基礎収入)×後遺障害等級に応じた労働能力喪失率×労働能力喪失期間に応じた係数という計算式で計算することになります。),死亡の場合の死亡による逸失利益(基礎収入×(1−生活費控除率)×就労可能年数に応じた係数という計算式で計算することになります。)があります。
また,乗っていた自動車の修理費等の物的損害(物損)があります。

Q3 : 相手方が加入している保険会社が示談を提案してきたのですが,金額に納得できません。相手方と裁判をした場合で違いがあるのでしょうか。

A :
交通事故については裁判例が多くあり,裁判におけるある程度の基準額が形成されています。一概には言えませんが,保険会社が任意交渉の段階で提案してくる示談の金額は裁判で請求する場合よりも低いことが多いです。

Q4 : 保険会社から過失割合が5対5なので,損害金額の5割しか支払わないと言われました。過失割合とは何ですか。

A :
交通事故が発生した場合特に自動車同士の事故の場合,加害者だけに100%の責任があると判断されるケースは少ないです。発生した損害について,どちらに何割の責任があるかということを表わすのが過失割合です。
過失割合については,事故態様(四輪車同士か,四輪車と二輪車か,自動車と歩行者か,信号機のある交差点かない交差点か,交差点以外の場所か,横断歩道があったか等)に応じてどちらに何割の責任があるかはある程度これまでの裁判で類型化されています。もちろん,幅のある類型ですので解釈に違いが生じること,そもそも類型にない事故態様の場合があること,双方の言い分に違いがあり事故態様そのものに争いがあること等がありますので,保険会社の主張する過失割合が正しいわけではありません。

Q5 : 交通事故で後遺障害が残ってしまいました。後遺障害に対する保険金は,後遺障害等級によって変わると聞いたのですが,この等級はどのように決まるのでしょうか。

A :
自賠責保険の保険金額を算定するにあたり,損害保険料率算定機構(自賠責保険会社とは独立の団体であり,損害保険料率算出団体に関する法律に基づき設立された法人です。)が労災補償を行う際に使用される行政通達である障害認定基準の内容に準じて後遺障害の等級認定を行っています。これはあくまでも自賠責保険の保険金額の算定にあたって行われているものですが,後遺障害に基づく損害賠償請求全般の基準になります。
この認定は,被害者請求をする場合は被害者の請求によって行われますが,相手方が任意保険に加入している場合,任意保険会社が任意保険金額と自賠責保険金額を一括して支払い(いわゆる一括払い),自賠責保険については任意保険会社が自賠責保険会社に請求を行うという方式をとることが多く,この場合,任意保険会社が損害保険料率算定機構に認定の請求を行います。
なお,自賠責保険の被害者請求に必要な書式については,自賠責保険の保険会社が書式を用意していますので,その保険会社から書式をもらうことになります。

Q6 : 認定された後遺障害等級に納得がいかないのですが,どうしたらよいでしょうか。

A :
被害者請求を行っていた場合,自賠責保険会社に対し,異議申立書を提出することができます。相手方が任意保険に加入しており,一括払いの方式をとっている場合,任意保険会社に異議申立てをし,任意保険会社が損害保険料率算定機構に再認定を依頼することになりますが,任意保険会社がこれを行わないことがありますので,その場合は,被害者請求に切り替えることになります。
異議申立てにあたっては,後遺障害の認定理由を確認した上で,不当な点を具体的に指摘し,裏付けとなる資料を提出することが重要です。
また,相手方に対し,損害賠償請求訴訟を裁判所に提起し,裁判で後遺障害等級を争い,裁判所が自賠責保険の後遺障害等級認定よりも重い後遺障害であると認定する場合もあります。

Q7 : 実際に,自賠責保険で認定された後遺障害等級が異議申立てや裁判で変わることはあるのでしょうか。

A :
変わることも事案によってはあります。
もっとも,残念ながら変わらない場合の方が多いと言わざるを得ません。

Q8 : 損害賠償請求は,事故から何年以内に行う必要があるのでしょうか。

A :
相手方に対する損害賠償請求は,基本的には交通事故から3年以内に裁判で請求しなければ,時効によって請求できなくなります。後遺障害に基づく損害については,後遺障害の症状固定日から3年です。自賠責保険の被害者請求についても,平成22年4月1日以降に起きた交通事故については同様です。
もっとも,実際に請求するには様々な準備が必要であり,事故時の記憶も時と共に薄れていきますので,交通事故から1年以内には,損害賠償請求をどのように行うかを考え始めることをおすすめします。