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遺言・相続・遺産分割 Q&A

Q1 : 遺言を残したいのですが,どのように書いたらよいのでしょうか。

A :
遺言は法律の定める方式に従っていない場合無効になりますので,注意して下さい。多く用いられているのは,自筆証書遺言と公正証書遺言という方式です。
自筆証書遺言は,その全文,日付,氏名を自筆で書き,印鑑を押すことで作成します。ワープロを使用した場合や,日付が○年○月吉日のように具体的な日付を特定できない場合は,無効になってしまいます。
公正証書遺言は,公証役場で公務員である公証人立ち会いの下で作成する遺言です。こちらは公証人が関与しますので,自筆証書遺言のように方式のミスで無効になってしまうことはほぼありません(ただし,後日,遺言を作成できるだけの判断能力が残っていなかったとして紛争になることはあります。)。
確実に遺言を残したい場合,公正証書遺言を作成する方が安全と言えます。

Q2 : 以前作成した遺言を撤回したのですが可能でしょうか。

A :
遺言は新しい遺言を作成することによって,全部撤回することも一部撤回することも可能です。複数の遺言が抵触する場合,新しい遺言が優先します。

Q3 : 亡くなった母の遺品を整理していたら遺言書と書かれた封筒が出てきたのですが,どうしたらよいでしょうか。

A :
遺言を発見した場合,家庭裁判所で検認の手続きをとる必要があります。遺言書と分かる封筒に封がしてあった場合,勝手に開封してはいけません。検認を経ずに遺言を執行した場合や勝手に開封した場合,5万円以下の過料に処せられる可能性があります。なお,公正証書遺言については,検認の必要はありません。

Q4 : 兄が亡くなったのですが,弟である私に相続権はあるのでしょうか。

A :
遺言書がなく,亡兄に子供がおらず,両親等も亡くなっている場合にのみ兄弟姉妹に相続権があります。相続分は,配偶者が4分の3,兄弟姉妹は4分の1です。配偶者もいなければ,兄弟姉妹に等分に相続権があります。

Q5 : 父が亡くなったのですが,遺言では,全ての財産を長男に相続させるとありました。弟である私は,何の権利もないのでしょうか。私たちは二人兄弟で既に母も亡くなっています。

A :
子供には遺留分(兄弟二人だけが相続人の場合,遺留分は法定相続分の2分の1なので4分の1の権利が遺留分になります)がありますので,遺留分侵害額の請求を兄に行うことにより遺留分侵害額に相当する金銭の支払請求ができます。
この遺留分侵害額の請求は,相続の開始及び遺留分侵害を知ったときから1年以内に行う必要がありますので,遺言の内容を知ってから1年以上経っている場合,この請求はできません。いつ遺言の内容を知ったかは争いになることが多いので,遺留分侵害額の請求をするのであれば,亡父が亡くなってから1年以内に行った方が良いです。

Q6 : 父が亡くなり遺言があったのですが,遺産は遺言の内容通りに分けなければならないのでしょうか。

A :
遺言がある場合でも相続人全員(受遺者がいれば受遺者の同意も必要となります。)で遺産分割協議を行い,遺言の内容と異なる遺産分割を行うことは原則としてできます。

Q7 : 父が亡くなったのですが,遺言はなく,相続人間で話し合っても話合いがまとまりません。どうしたらよいのでしょうか。

A :
家庭裁判所に遺産分割の調停の申立てをすることになります。調停は,裁判所が中立の調停委員2名を選び,その調停委員が間に入って,話合いをする手続きです。話合いがまとまらない場合,裁判所に審判を求め,裁判所に結論を出してもらうこともできます。

Q8 : 遺産分割協議を行っているのですが,兄は自分が亡父の面倒を見て寄与分があるので,多く財産を取得する権利があると主張しています。寄与分とはどのような制度ですか。

A :
寄与分とは,被相続人(この場合亡父)の財産の維持,増加に特別の寄与をした相続人がいる場合に,この寄与分を金銭的に評価し,その評価分を遺産から控除して相続分を算定し,寄与分のある相続人は,この算定された相続分と寄与分の合計を取得する制度です。
寄与分が認められるには特別の寄与が必要であり,通常期待される貢献をしただけでは特別の寄与とはいえません。寄与の類型には家事従事型,金銭等出資型,療養看護型,扶養型,財産管理型等があり,各類型に応じてどの程度のことをすると特別の寄与といえるかを考える必要があります。単に同居してある程度の面倒を見ていただけでは,寄与分が認められる可能性は低いですが,重症の認知症の亡父の面倒を見ていた,生活費の大半を支出し亡父の財産の維持に著しく寄与した等の事情があれば,寄与分が認められる可能性は高くなります。

Q9 : 父が亡くなり,遺産として3000万円の預金があることが分かりました。母は既に亡くなっており,子供は兄弟二人だけで遺言はありませんでした。しかし,兄は父の生前に自宅の頭金として1000万円の金銭の贈与を受けていました。このような場合でも遺産は半分ずつ分けなければならないのでしょうか。

A :
相続人の一人が生計の資本として贈与を受けた場合,その贈与については相続分の前渡しを受けたものとして,各自の相続分を算定します。自宅の頭金として贈与を受けたのであれば生計の資本として贈与されたと考えられますので,相続の対象となるのは預金3000万円に贈与分1000万円を足した4000万円であり,これを兄弟各自の相続分2分の1で分けますので,2000万円が相続すべき金額となります。兄はこのうち既に1000万円を受け取っていますので,預金から受け取る金額は1000万円であり,弟であるあなたが預金から2000万円を受け取ることになります。なお,贈与の金額の評価基準時は相続開始時(死亡時)と言われていますので,贈与時と相続開始時で貨幣価値が変わっている場合,相続開始時の貨幣価値で評価しなおすことになります。

Q10 : 夫が借金を残して亡くなってしまいました。相続放棄という手続きがあると聞いたのですがどのような手続きでしょうか。

A :
相続によって承継されるのは財産だけでなく,借金も承継されます。ですが,家庭裁判所で相続放棄の手続きをとることにより,借金返済の義務を逃れることができます。ただし,相続を放棄すると財産の承継もできなくなりますので,たとえば,自宅不動産があったとしても,これを相続することはできません。また,亡夫の財産を処分してしまうと,相続放棄の手続きがとれなくなるので注意して下さい。
相続放棄は,相続の開始があったことを知ったときから3ヶ月以内にしなければなりません。亡夫と同居していたのであれば,通常亡くなったことを知ったときに,相続の開始があったことを知ったといえますので,亡夫が亡くなってから3ヶ月以内に家庭裁判所で手続きをとるべきです。ただし,亡夫の借金について全く知らなかった場合,亡くなってから3ヶ月を経過していたとしても相続放棄が認められることがありますので,借金があることを知ったらすぐに手続きをとるべきです。

Q11 : 弟が借金を残して亡くなってしまいました。弟には妻と子供がいましたが,相続放棄をすると聞きました。兄である私は何も手続きをしなくても大丈夫でしょうか。

A :
被相続人の配偶者と子供(子供が死亡し孫がいる場合は孫,ひ孫等)が相続を放棄した場合,次に,被相続人の直系尊属(父母,祖父母等)が相続人になります。ですので,この場合,存命している父母,祖父母等も相続放棄の手続きをする必要があります。直系尊属全員が亡くなっているか,直系尊属全員が相続放棄をした場合,次に兄弟姉妹が相続人となりますので,兄弟姉妹も相続放棄の手続きをする必要があります。兄弟姉妹のうち既に死亡しているがその子供(被相続人から見て甥姪)がいる場合,やはりその甥姪も相続放棄の手続きをする必要があります。
したがって,亡くなった方(被相続人)の配偶者,子供(子供が死亡し孫がいる場合は孫,ひ孫等),存命している直系尊属(父母,祖父母等),兄弟姉妹,甥姪(既にその親である兄弟姉妹が死亡している場合)の全員が相続放棄の手続きをする必要があります。全員同時に手続きをする必要はありませんが,全員が手続きをする必要がありますので,速やかに連絡を取り合うべきです。