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不動産の問題 Q&A

【借地権の種類について】

Q1 : 借地権にはどのような種類があるのでしょうか?

A :
まず,借地権とは,建物の所有を目的とする地上権または土地の賃借権のことをいいます。そして,借地権には,@更新が可能な「普通借地権」,A一定期間の経過により消滅する「定期借地権」,B土地所有者自らが,自己の土地に借地権を設定する「自己借地権」,C臨時施設の設置その他,「一時使用のために設定された借地権」があります。
Aの「定期借地権」とBの「自己借地権」は,新しい借地借家法で新設されました。

Q2 : 「定期借地権」には,どのようなものがありますか?

A :
@存続期間が50年以上で,利用目的に限定がない「一般定期借地権」,A存続期間が30年以上,利用目的に限定がないが,期間が経過した時点で建物が相当な対価で地主に譲渡されることを予め約束する「建物譲渡特約付借地権」,B存続期間が10年以上20年以下,利用目的が事業用建物の所有に限られる「事業用借地権」の3つの種類があります。
【借地契約の内容について】

Q1 : 長年の経過により,近隣の土地の地代に比べて,地代が安いと思われます。このような場合,私(地主)は,どのような手段を取ればよいのでしょうか?

A :
借地人に対し,地代の増額請求をすることになります。この請求は,形成権といって,増額請求の意思表示によって,将来に向かって客観的に相当な額に増額する効果が発生します。増額請求を受けた借地人は,地主の請求に不満があって,一円も支払わないと地代不払いで契約を解除されてしまいますので,自分が相当と考える額を支払えば足ります。地主が受け取ってくれなければ,法務局に供託をすれば足ります。
あとで決まった額と借地人が供託した額とに差額があるときは,借地人は,その差額に年1割の利息を付けて地主に支払わなければなりません。
また,当事者間で,地代増額の協議が整わない場合,まずは簡易裁判所に調停を申し立てます(調停前置)。調停で話し合いがまとまらない場合に初めて,裁判を起こすことになります。

Q2 : 敷金,権利金,保証金は,どのように違うのですか?

A :
@まず,敷金とは,賃借人の賃料債務その他の債務を担保する目的で,賃借人から賃貸人に交付される金銭であって,契約終了の際に,賃借人の債務不履行があれば当然その額が減額され,債務不履行がなければ全額賃借人に返還されるものです。なお,地代の滞納がある場合,これを敷金から差し引くか,敷金とは別に請求するかは,地主の判断によります。したがって,敷金が差し入れてあっても,地代の不払いがある場合,地主から賃料不払いを理由に契約を解除される可能性がありますので,注意が必要です。
Aつぎに,権利金ですが,一般的には借地権の設定の対価として支払われることが多いと思われます(礼金とほぼ同じです)。借地権は,更地価額の50%〜90%もの割合の独立した財産的価値をもつものなので,借地人がこのような財産的価値を手に入れることに対する礼金と考えればよいでしょう。権利金は,一般的に,借地契約終了時に返還されません。
B最後に,保証金ですが,一般的には,敷金と同じように,賃借人の債務を担保するために交付されており,この場合には,契約終了時に返還されることになります。これに対し,権利金と同じように,借地権設定の対価として差し入れられることもあり,この場合には返還されないことになります。
【借地契約の終了について】

Q1 : 借地人が地代を滞納していますが,どのような措置を取ればよいでしょうか?

A :
6ヶ月から1年程度の不払いがある場合は,契約を解除することができます。(建物の賃貸借の場合は,3ヶ月程度の賃料不払いで解除できます。)解除する場合は,借地人に対して相当の期間(1週間程度)を定めて,滞納地代の支払いの催告を行い,期間内に支払がない場合は,契約を解除する旨の意思表示を配達証明付内容証明郵便で行います。
解除の意思表示が借地人に到達すると,地主は,借地人を被告として建物収去土地明渡請求訴訟を提起します。裁判所が,地主の請求を認める判決を言い渡し,判決が確定しても,借地人が土地を明け渡さない場合は,確定判決に基づき強制執行をすることになります。

Q2 : 駐車場として土地を貸したら,借地人が土地に建物を建て,住み始めてしまいました。このような用法違反がある場合,借地契約を解除することができますか?

A :
借地人の用法違反が,地主との信頼関係を破壊する程度にまで達している場合は(用法違反がかなりの程度に悪質といえる場合),契約を解除することができます。
上記の場合は,用法違反の中でも,かなり悪質といえる部類に属しますので,契約を解除することができます。
ただし,地主が,借地人の用法違反を放置しておくと,用法違反の事実を認めたとみなされて,解除できなくなる可能性があります。そこで,地主としては,借地人が使用方法をきちんと守っているかを定期的に確認する必要があるでしょう。

Q3 : 半年後に借地契約の期間が満了します。借地人から土地を返してもらえるでしょうか?

A :
借地契約の存続期間が満了する場合,借地人が契約の更新を請求したときは,建物がある場合に限り,契約は更新したものとみなされます。これに対し,地主が遅滞なく異議を述べ,その異議に「正当な事由」があれば,契約の更新は認められなくなります。
そして,「正当な事由」があるかどうかは,@地主および借地人が土地の使用を必要とする事情,A借地に関する従前の経過,B土地の利用状況,C地主が土地の明渡しの条件として財産上の給付をする旨の申出をしたかを判断して決められます。この中で最も重要な要素は,@です。

Q4 : 借地人に支払う立退料は,どのように算定されるのでしょうか?

A :
まず,立退料は,ほかの正当事由を補完する要素と考えられています。したがって,借地人が,借地上の建物を居住用として使用し,土地が生活の本拠となっている場合には,そもそも正当事由が認められることは困難なため,いかに多額の立退料を提供しても,正当事由が認められることはありません。
逆に,地主の正当事由が十分認められる場合は,地主側は,最低でも借家権価額程度(借地権価額の3割程度)の立退料の支払いをすれば足りると思われます。
このように,立退料は,地主・借地人双方の利益を調整するものなので,その額も正当事由の具備の程度によって,相対的に決まってくるといえます。
【借家契約の内容】

Q1 : 借家契約で定められる期間は,最短・最長で何年になるのでしょうか?

A :
まず,最短では「1年以上」となります。これに対し,最長期間については,制限がありません。したがって,借家契約に期間を定める場合は,「1年以上」の期間としなければなりません。
なお,期間が満了した場合,借家契約は,当然に終了するのではなく,家主が期間満了の1年から6ヶ月前までの間に,借家人に対し,契約更新を拒絶する旨の通知又は条件を変更しなければ更新をしない旨の通知をしなかったときは,従前の契約と同一の条件で契約を更新したものとみなされます。これを法定更新といいます。そして,家主の更新拒絶等の通知に「正当な事由」が必要であることは,借地契約と同じです。

Q2 : 定期借家契約とは,どのようなものですか?

A :
定期借家契約とは,契約で定めた期間の満了により,更新されることなく終了する建物賃貸借契約です。「良質な賃貸住宅等の供給の促進に関する特別措置法」が平成11年に成立したことにより,借地借家法の一部が改正され,創設されました。
定期借家契約を結ぼうとするときは,事前に書面で「期間満了で賃貸借は更新なく終了する」と記載し,相手方に交付しなければなりません。
また,定期借家契約をどの程度の期間として設定するかは,自由です。

Q3 : 建物賃貸借契約の中に,契約更新時に賃料を値上げする自動値上げ条項があります。このような条項は,有効なのでしょうか?

A :
一般的には,賃借人にとって著しく不合理なものでない限り,自動値上げ条項も有効とされています。ただし,改定された賃料が,時価相場と著しくかけ離れ,高額すぎる結果となり,賃借人にとって著しく不利益となる場合は,特約が無効となることもあります。

Q4 : アパートを月額3万8000円の家賃で借りていますが,1年の更新期間ごとに更新料として賃料の2ヶ月分を支払うという契約内容になっています。このような更新料支払特約は有効ですか?

A :
最高裁平成23年7月15日判決は,この程度の更新料支払特約を有効としています。
最高裁は,更新料の性質につき,一般に賃料の補充ないし前払,賃貸借契約を継続するための対価等の趣旨を含む複合的な性質を有するものと解しています。そして,賃貸借契約書に一義的かつ具体的に記載された更新料条項は,更新料の額が賃料の額,賃貸借契約が更新される期間等に照らし高額にすぎるなどの特段の事情がない限り,有効としました。
【借家契約の終了】

Q1 : 賃借人の原状回復義務とは,どのような内容のものなのでしょうか?

A :
原状回復義務とは,賃借人の保管義務違反等,その責めに帰すべき事由によって加えられた毀損(汚損)について原状に復せしむべき義務をいいます。賃借物の自然または使用収益の正常な過程において発生した損耗・摩耗・増減等は含まれません。

Q2 : 借家を明け渡す際に,きれいに清掃をしたのに,家主からクリーニング費用を請求されました。支払わないといけないのでしょうか?

A :
クリーニング費用について事前に何の合意もしていない場合,明渡しに際して社会通念上,通常といえる程度の清掃が行われていて,賃借人の責めに帰すべき汚損等が残っていなければ,それ以上に専門業者によるクリーニング費用まで賃借人が負担する必要はありません。
他方,賃貸借契約書に「賃借人が退去する際,クリーニング費用を敷金から控除する」などといった特約がなされている場合があります。このような特約を有効とする裁判例もあります。しかし,如何なる場合も有効となるわけではなく,個別具体的に判断されるべきだと思われます。

Q3 : 家賃を滞納したところ,家主からカギを替えられ,荷物も持ち去られてしまいました。何か対抗策はありますか?

A :
まだ契約が解除される前であれば,家主に対し,損害賠償請求をすることができます。また,刑事上も住居侵入,窃盗などで告訴することもできると思われます。
次に,家主から賃料不払いを理由に契約解除された後に,カギを替えられてしまった場合ですが,この場合も,家主による自力執行は許されませんので,賃借人は,上記と同様に家主に対し,損害賠償請求等をすることができます。
つまり,家主としては,賃貸借契約終了後も,改めて賃借人の同意を得るか,訴訟提起・強制執行という適正な手続きを取る必要があるということをしっかりと認識する必要があります。