借金の問題 B任意整理手続 Q&A
Q1 : 任意整理とは何ですか?
- A :
- 任意整理とは,個々の債権者との間で交渉を行い,総支払額や支払方法について合意をした上で,その合意した支払方法に従った支払いをする,という債務整理の方法です。
Q2 : 各債権者との交渉はどのように進めていくのですか?
- A :
- 「クレジット・サラ金処理の東京三弁護士会統一基準」というものに従って,交渉します。この基準に従い,具体的には,以下の手順で処理を行います。
@ 取引経過の開示請求
債権者に対しては,取引の当初に遡って,すべての取引経過の開示を求めます。
A 残元本額の確定
開示された取引経過を元にして,利息制限法所定の制限利率によって元本充当計算を行い,最終取引時点(最後に借入又は返済をした時点)での残元本額を確定します。
B 弁済案の提示
弁済案の提示に当たっては,最終取引日における残債務額を支払総額とし,和解成立までの経過利息(損害金)及び和解成立後分割金支払中の将来利息は付さない案を提示します。
C 和解書作成
Q3 : 元本充当計算とは何ですか?
- A :
- 貸金業者は,利息制限法が元金額に応じて上限利率を定めているにもかかわらず,その上限利率を更に上回る高利の約定を取り決め,本来は利息として受領でできないはずの利息をこれまで取得してきました。この払いすぎた利息を元本に充当することにより,法律上,支払義務のある債務額を確定することを元本充当計算といいます。
※ 利息制限法の上限金利は以下のようになっています。
元本額 10万円未満 20%
10万円以上100万円未満 18%
100万円以上 15%
Q4 : 債権者にはどれくらいの期間で支払わなければならないのですか?
- A :
- 3年から5年の範囲内で支払っていただくことになります。3年といっても,36ヶ月間,毎月支払わなければなりませんので,相当切りつめた生活を覚悟しなければなりません。
Q5 : 任意整理を行うと,二度とカードを作ったり,借入をすることができなくなるのですか?
- A :
- 任意整理を行うと,いわゆるブラックリストに掲載され,5年間から7年間は,カードを作ったり,借入をすることができなくなってしまいます。ただし,この期間は,法律で定められた期間ではないため,個別の事情(その方の収入や年齢等)によって左右されるようです。つまり,安定した収入があれば,上記期間経過前でも借入をすることができる場合があるでしょうし,逆に無職であれば,上記期間経過後でも借入をするのは難しいでしょう。
なお,一度任意整理を行った方は,今後はできるだけ現金払いをし,カードに頼らない方がよいと思います。この点も良く弁護士とご相談されることをお勧めします。
Q6 : サラ金業者や信販会社からの借金の時効は,何年なのでしょうか?
- A :
- 最終取引日から5年です。ただし,5年が経過すると自動的に時効消滅するわけではありません。時効を援用することで初めて時効消滅します(時効援用通知を配達証明付内容証明郵便で郵送します)。
これに対し,信用組合,信用金庫の債権は,最終取引日から10年経たないと時効消滅しません。
Q7 : 任意整理のメリットとデメリットは何ですか?
- A :
- 任意整理のメリットは,@債権者からの取立行為を禁止することができること,A利息制限法所定の制限利率によって元本充当計算を行うことにより,返済総額を圧縮することができること,B場合によっては過払金を回収することができること,などが挙げられます。
逆に,任意整理のデメリットとしては,@債権者の同意が必要なため,非協力的な債権者がいた場合には手続がなかなか終わらないこと,Aいわゆるブラックリストに掲載され,キャッシュカードやクレジットカードが使えなくなったり,今後新たな借入が難しくなること,B破産とは異なり,債権者に支払わなければならないこと,などが挙げられます。
Q8 : 一度弁護士に依頼して任意整理をしたのですが,途中で支払が出来なくなってしまいました。もう一度任意整理をすることはできますか?
- A :
- 一度,行き詰まってしまったわけですから,その時点で破産の要件である「支払不能」となったと考えた方がよいと思います。したがって,破産手続を利用する方向に方針変更された方がよい場合が多いと思われます。
ただし,債権者が1社で,債務総額が50万円を下回るような場合には,破産の申立てをするのに躊躇を覚えてしまいますので,そのような場合は,もう一度債権者と交渉して,任意整理をすることも可能と思われます。ただ,一度支払が出来なくなってしまっているので,二度目の任意整理の選択は慎重にされた方がよいでしょう。よく弁護士とご相談されることをお勧めします。
Q9 : 父親が,借金を抱えたまま死亡してしまいました。私は支払わなければならないのでしょうか?
- A :
- お父様が亡くなり,そのことを知ったときから3箇月以内に,家庭裁判所(お父様が亡くなった住所地を管轄する裁判所)に相続放棄の申述受理の申立てをすれば,お父様の借金を相続しなくて済むことになります。ただし,相続放棄をすると,お父様のプラスの財産も相続することができなくなってしまいますので,一度弁護士にご相談された方がよいでしょう。
Q10 : 任意整理にはどれくいの時間がかかりますか?
- A :
- A : 任意整理は,以下のような流れを辿ります。ただし,債権者の対応等によって,かかる時間は様々です。
ア 各債権者への受任通知発送(これにより各債権者からの取立が止まります。)
↓1ヶ月程度
イ 各債権者から取引履歴が開示される
↓1〜2ヶ月程度
ウ 債権調査(イの取引履歴を利息制限法に基づいて計算し直し,正確な債務額を把握します。)
↓2〜3週間程度
エ 依頼者の方と打合せ・債権者との交渉
↓1〜2週間程度。
オ 和解書締結
↓翌月から開始
カ 各債権者への支払開始