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借金の問題 @自己破産手続 Q&A

Q1 : 破産とは何ですか?

A :
破産とは,支払不能になった方が裁判所に申し立てをして,借金を免除してもらう制度です。ただし,債権者から借りたお金を返さないわけですから,その代償として,自分の財産を換価して債権者に分配しなければなりません。

Q2 : 破産手続には,どのような種類がありますか?

A :
破産手続には,@破産手続開始決定と同時に破産手続が終了し,すぐに免責手続に移行する同時廃止事件と,A裁判所から破産管財人という弁護士が選任され債権者集会が開催される管財事件があります。
同時廃止事件と管財事件を分ける基準は,次の2つがあります。
 ア 20万円以上の財産を有している場合は,原則として管財事件となる。
 イ 20万円以上の財産をもっていなくても,申立人がギャンブルで借金を作ったなどの免責不許可事由が認められ,裁量免責の可否につき管財人が調査する必要があると裁判所が考えた場合も管財事件となる。
管財事件となる場合には,申立時に最低20万円を管財人に引き継ぐために用意しなければなりません。この点は注意が必要です。

Q3 : 自分の財産はすべてとられてしまうのですか?

A :
そのようなことはありません。20万円以下の財産や日用品等は手元に残すことができます。家財道具も,特別高価なものでない限り,取られることはありません。

Q4 : 借金の総額がいくら位だと,破産できますか?

A :
一般的な破産原因は,債務者の支払不能です(破産法15条1項)。つまり,弁済期にある借金を今後弁済することができない状態になれば,自己破産手続を利用することができます。このような状態は,年齢・収入・健康状態など,人それぞれによって異なってきますので,まずは弁護士にご相談ください。

Q5 : 破産のメリットとデメリットは何ですか?

A :
破産のメリットは,何と言っても全ての借金が免除されることです。このことを「免責」といいます。
逆に,破産のデメリットとしては,破産手続中は,保険外交員・警備員・宅地建物取引主任者・証券外務員など,一定の職業に就くことができなくなることが挙げられます。ただし,破産手続が終わった後は,この制限は解除されます。
また,もう一つのデメリットとしては,20万円以上の財産を有している場合は,基本的に手放さなければならないということが挙げられます。ただし,これは裁判所による破産手続開始決定が出された時点を基準としますので,開始後に破産者が取得した新得財産は自由に処分することができます。

Q6 : 破産した場合,全ての借金が免責されるのですか?

A :
免責されないもの(「非免責債権」)もあります。具体的には,以下に述べるものです。
@ 租税等の請求権
A 悪意の不法行為に基づく請求権
B 破産者が故意又は重大な過失により加えた人の生命又は身体を害する不法行為に基づく損害賠償請求権
C 扶養義務,婚姻費用,養育費等
D 雇用関係に基づいて生じた使用人(労働者)の請求権及び使用人(労働者)の預り金の返還請求権
E 破産者が知りながら債権者名簿に記載しなかった請求権
F 罰金等の請求権

Q7 : 保証人に迷惑がかかりますか?

A :
お金を借りた人(主債務者)が破産をした場合,(連帯)保証人に請求がいくことになります。債権者は,主債務者が破産したような場合のために,(連帯)保証人を付けているためです。したがって,破産しようとする場合は,(連帯)保証人にも一言伝えた方がよいでしょう。そして,(連帯)保証人になられた方も,早期に弁護士に相談されることをお勧めします。

Q8 : ギャンブルなどの浪費で借金を作ってしまいました。破産できますか?

A :
ギャンブルなどの浪費は,「免責不許可事由」(借金の免除が許されない事情)となります。「免責不許可事由」がある場合でも,管財人が調査した結果,破産者が十分に反省し,その後の生活態度を改めたり,破産手続に対し誠実な姿勢を示している場合は,管財人が「裁量免責」を相当とする意見を裁判所に提出し,裁判所によって,免責許可決定が出される可能性があります。
この他,以下に挙げるものも「免責不許可事由」に該当します。
@ 換金行為(クレジットカードで商品を購入し,すぐにその商品を売却し,現金化すること)
A 偏った返済(一部の債権者にだけ,優先的に返済すること)
B 裁判所に対する説明拒絶・虚偽説明
C 不正の手段により,管財人業務を妨害
D 過去に免責許可決定を得ており,その確定の日から7年以内に免責許可の申立てをしたこと

Q9 : 破産した場合,銀行口座を利用することはできなくなりますか?

A :
破産をしても銀行口座を利用できます。また,新しく銀行口座を開設することも可能です。ただし,銀行口座がある銀行から借入れをしている場合は,弁護士が通知を出すと同時に,口座内に残っている現金を引き出せなくなる可能性がありますので,注意が必要です。

Q10 : 破産した場合,自動車を手放す必要がありますか?

A :
自動車ローンが未だ残っている場合には,ローン会社から引き上げられると思われます。これに対し,ローンが残っておらず,自動車の時価が20万円未満の場合は,そのまま使用することができます。ローンが残っておらず,時価が20万円以上の場合は,原則として売却し,売却代金を管財人に引き継ぐ必要があります。

Q11 : 破産した場合,保険はどうなりますか?

A :
まず,問題となる保険は,破産者が「契約者」のものに限られます。破産者が被保険者で,ご家族が契約者の保険は,問題となりません。
次に,破産者が「契約者」の保険で,解約返戻金が20万円以上となる保険は,解約して返戻金を管財人に引き継ぐ必要があります。ただし,健康状態等の問題から,どうしても保険を維持したい場合には,保険はそのまま維持しつつ解約返戻金相当額を用意して,管財人に引き継ぐことになります。

Q12 : 破産した場合,退職金は受け取れますか?

A :
まだ退職していない場合は,退職金支払見込額の8分の1が20万円を超える場合は,8分の1相当額を管財人に引き継ぐことになります。ただし,退職金の支給が近々行われるような場合には,支払見込額の4分の1を評価額とします。
これに対し,既に退職して退職金を受領済みの場合は,受領した退職金全額を評価額とします。

Q13 : 破産すると,子どもの学校や就職に影響しますか?

A :
お子様が,(連帯)保証人になっていない限り,ないと思われます。親の経済的な失敗と子どもの学校や就職とは無関係だからです。

Q14 : 家族に内緒で,破産の申立てをすることはできますか?

A :
申立てをすることは不可能ではありませんが,申立てに際して,裁判所に家計簿(横浜地裁管内では1か月分)を提出しなければなりません。家計簿の収入欄には家計を共にしている人全員の収入を記入し,支出欄には家計を共にしている人全員の支出を記入しなければなりません。そのため,ご家族の協力が必要になりますので,できれば事情を説明して,ご協力いただけるようにされた方がよいでしょう。

Q15 : 弁護士に依頼する費用がありません。どうしたらよいですか?

A :
まず,無職の方や生活保護を受給されている方で全く財産を有していない方などは,法テラスを利用されることをお勧めします。
次に,解約返戻金が20万円以上となる保険に加入されているような方は,保険を解約して弁護士費用に充てれば,それだけ自分の懐が痛まずに済むことになります。保険をそのままにしておけば,申立時に返戻金や返戻金相当額を管財人に引き継がなければならなくなります。

Q16 : 破産手続にはどれくいの時間がかかりますか?

A :
破産手続は,以下のような流れを辿ります。同時廃止事件の場合は,弁護士が受任してから免責決定が出るまでに早くて4〜5ヶ月,管財事件の場合は,早くて6ヶ月程度はかかります。

 ア 各債権者への受任通知発送(これにより各債権者からの取立が止まります。)
      ↓1ヶ月程度
 イ 各債権者から取引履歴が開示される
      ↓1〜2ヶ月程度
 ウ 債権調査・必要書類の準備等(イの取引履歴を利息制限法に基づいて計算し直し,正確な債務額を把握します。)
 エ 事務所での打合せ・裁判所への申立(打合せは2〜3時間程度かかります。)
      ↓この期間は裁判所によって異なります(長くて1〜2週間)。
 オ 破産審尋期日・破産手続開始決定(破産審尋期日の有無・方法は,裁判所によって異なります。)
      ↓2ヶ月程度                ↓3ヶ月程度
 カ 免責審尋期日(同時廃止事件の場合)   カ 債権者集会・免責審尋期日(管財事件の場合)
                         なお,管財人の財産調査等が終わらないと,
                         債権者集会は続行となり,更に3ヶ月程度かかります。
                 ↓1週間程度
 キ 免責許可決定(官報公告の翌日から2週間経過すると,免責が確定します。)