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夫婦の問題 Q&A

【離婚の種類】

Q1 : 離婚するには,どのような手続を踏む必要があるのでしょうか?

A :
離婚するには,主に,次の@からBの手続を踏みます。
@まず,夫婦間で協議(話し合い)をする必要があります。全離婚のうち約90%が協議離婚だと言われています。
A次に,協議がまとまらない場合には,家庭裁判所で調停をする必要があります。離婚トラブルでは,すぐに裁判で解決するのではなく,まず調停で話し合い,解決することが義務づけられています(調停前置主義)。全離婚のうち約9%が調停離婚だと言われています。
B最後に,調停でも解決できない場合には,家庭裁判所に離婚訴訟を起こす必要があります。全離婚のうち約1%が裁判での離婚だと言われています。

Q2 : 協議離婚する場合には,どのような点に注意する必要がありますか。

A :
主に,次の@からDに注意する必要があります。
@お互いに離婚に同意しているかを確認します。
A未成年の子どもがいる場合には,離婚に際して,夫婦の一方を親権者と定める必要があります。それに合わせて養育費も決める必要があります。また,監護親とならなかった親と未成年の子どもとの面会の方法も定めます。
B婚姻後に形成された夫婦の共有財産をどのように分けるのかという財産分与も決める必要があります。
C夫婦の一方に不貞行為があったような場合は,慰謝料の額を決める必要もあります。
D相手方(主に夫)が,厚生年金や共済年金に加入している場合には,年金分割も決める必要があります。

Q3 : 調停離婚は,どのように進んでいきますか。

A :
調停離婚は,次の@からEのように進んでいきます。
@家庭裁判所への申し立て(原則として,相手方の住所地の家庭裁判所に申し立てます。)
A相手方に対する呼出状の送達(申立受理後,1〜2週間後に家庭裁判所から第1回調停期日が記載された呼出状が当事者双方に郵送されます。
B第1回調停(必ず当事者本人が出頭しなければなりません。1回にかかる調停事件は,2〜3時間程度です。)
C数回の調停(約1ヶ月間隔で行われ,半年程度で終了するケースが多いと思われます。原則的に当事者の出頭が必要です。弁護士に依頼した場合で,どうしても本人が出頭できない場合には弁護士のみの出頭も認められていますが,最後の調停期日には,必ず本人が出頭する必要があります。)
D調停の成立あるいは不成立(夫婦が離婚その他の条件について合意すると,調停が成立したという調停調書が作成されます。調停成立によって離婚が成立します。これに対し,合意に達しない場合には,不成立調書が作成されます。)
E調停調書の市町村役場への提出(申立人は,調停成立の日から10日以内に,離婚調停調書の謄本を添えて,市区町村長に対し離婚届を提出しなければなりません。ただし,申立人が届出をしないときは,相手方が届け出ることができます。)

Q4 : 離婚裁判は,どのような場合に起こせますか。

A :
離婚裁判はどのような場合にも起こせるというわけではなく,以下の離婚原因の一つ以上に該当しなければなりません。
@不貞行為(民法770条1項1号)
配偶者ある者が自由な意思に基づいて配偶者以外の者と性的関係を結ぶことをいいます。一時的なものか継続しているか,愛情の有無は関係ありません。
A悪意の遺棄(民法770条1項2号)
悪意の遺棄とは,正当な理由なく同居・協力・扶助義務を果たさないことをいいます。相手を置き去りにする場合のみを指すのではなく,相手を追い出したり,たまたま出て行った相手を家に入れないことも含みます。
B3年以上の生死不明(民法770条1項3号)
3年以上,生存も死亡も確認できない状態が現在も引き続いていることをいいます。
C強度の精神病(民法770条1項4号)
強度の精神病かどうかは,専門医の鑑定により,その科学的判断を素材にして,法律的に判断されます。
Dその他婚姻を継続しがたい重大な事由(民法770条1項5号)
婚姻関係が破綻しているかを判断するにあたっては,婚姻中の両当事者の行為や態度,子の有無や年齢,婚姻継続の意思,双方の年齢,健康状態,資産状況,性格など婚姻生活全体の一切の事情を裁判官が考慮します。

Q5 : 弁護士に依頼する必要はあるのでしょうか。

A :
調停は家庭裁判所における話し合いですから,弁護士に依頼しないで自分で出頭される方もいらっしゃいます。しかし,裁判は,法律の専門的な知識や技術を必要としますから,是非裁判を起こす前から弁護士に依頼することをお勧めします。また,調停にしろ裁判にしろ,時間の外に精神的負担もかかってきますので,一人で行うにはしんどい場合も多いといえます。このようなことを考えて,調停を起こす段階から弁護士に依頼される方も数多くいらっしゃいます。
【子どもの問題】

Q1 : 親権とは何ですか。

A :
親権とは,父母が未成年の子を監護教育し,子の財産を管理することを内容とする親の権利義務の総称です。未成年の子がいる場合,離婚が成立するためには,夫婦の一方を親権者として指定することが必要となります。

Q2 : 調停や裁判では,どのような基準で親権者が決められるのですか。

A :
調停や裁判における親権者指定の基準は,「子の利益」ですが,具体的には次のような要素が考えられます。
ア 親側の事情
@ 監護体制の優劣(経済状態,居住環境,家庭環境,教育環境)
A 子に対する愛情,監護意思
B 心身の健全性
イ 子側の事情
@ 子の年齢,心身の状況(子の年齢が低いほど母親が親権者に指定されやすい傾向があります。)
A 環境の継続性(現実に子を養育監護している者を優先します。)
B 子の意思(15歳以上の未成年の子については,その意思を尊重します。)

Q3 : 監護者とは何ですか。

A :
監護者とは,親権の一部(身上監護権)を有する者と定義されています。簡単に言うと,子どもを引き取って,身の回りの世話をする人のことをいいます。

Q4 : 離婚するに際し,親権者と監護者を分けることもできますか。

A :
できます。ただし,そのようにすることが,「子の利益」になるのかどうかを考える必要があります。

Q5 : 離婚するに際し,「親権者を変更しない」という合意のもと,相手方を親権者としてしまいました。しかし,相手方は,親権者として相応しくありません。このような場合,親権者を変更することができますか。

A :
「親権者を変更しない」という合意は,無効です。したがって,「子の利益のために必要があると認めるときは」親権者を他方に変更することができます。ただし,当事者間の協議のみによって親権者を変更することはできず,必ず家庭裁判所の手続を経なければなりません。また,子が15歳以上のときは,子の陳述を聞かなければならないとされており,子の希望は重要な判断材料となります。

Q6 : 離婚するに際し,相手方を親権者と指定しました。私は,離婚後も子どもに会えるのでしょうか。

A :
原則的に会うことができます。離婚後親権者若しくは監護者とならず,子を監護養育していない親が,子と面会する権利を「面接交渉権」といいます。面接交渉権が認められるかどうかは,「子の福祉」の観点から判断されます。したがって,子どもに暴力を振るうような親の場合,「子の福祉」を害するとして,面接交渉が制限される場合があります。
【お金の問題】

Q1 : 離婚に関わるお金の問題は,どのようなものがありますか。

A :
慰謝料,財産分与,養育費,婚姻費用,年金分割があります。

Q2 : 離婚に際し,相手方から慰謝料を取れる場合は,どのような場合ですか。

A :
慰謝料とは,相手の浮気や暴力などの違法な行為があった場合に,「精神的苦痛」を受けたことに対する損害賠償金です。単なる性格の不一致や価値観の違いは,違法行為とはいえないことが多く,慰謝料請求できない場合がほとんどです。
慰謝料を認めるとして,次に問題となるのはその額です。額を決めるにあたって考慮される要素としては,@違法行為の程度・態様,A精神的苦痛の程度,B当事者の年齢・社会的地位・支払能力,C子の有無・数などです。ケースバイケースですが,一般的には300万円程度が平均だと思われます。

Q3 : 相手方が,「離婚が成立するまで生活費を渡さない。」と言ってきました。私は,生活費をもらえないのでしょうか。

A :
当然もらえます。離婚が成立するまでの日常の生活費,子の養育費,交際費,娯楽費など婚姻から生じる全ての費用のことを婚姻費用といいます。夫婦は,お互いを扶養する義務があるため,別居中であったり,離婚調停中であっても,離婚が決着するまでは,生活費をお互いに分担しなければなりません。つまり,収入の多い側が,少ない側の生活費を分担することになります。その額は,裁判所が作成した「婚姻費用算定表」という早見表がありますので,それを参考にして決めます。

Q4 : 離婚に際し,夫婦の財産はどのように分けるのでしょうか。

A :
結婚してから夫婦が協力して築いてきた財産を分けることを財産分与といいます。婚姻中の財産には,@特有財産(遺産や結婚前に貯めた預貯金など名実共に一方が所有する財産),A共有財産(名実共に夫婦の共有に属する財産),B実質的共有財産(名義は一方に属するが,夫婦が協力して取得した財産)の3つがあります。財産分与の対象になるのは,A共有財産とB実質的共有財産のみであり,@特有財産は原則として分与の対象にはなりません。
分与の割合は,基本的に5:5として認められる傾向にあります。

Q5 : 離婚後の子どもの養育費はどのように決まるのでしょうか。

A :
養育費とは,未成熟子が社会人として独立自活ができるまでに必要とされる費用です。衣食住のための費用,医療費,教育費などが含まれます。教育費の中には,進学のための予備校の費用や塾の費用,家庭教師代,受験料等も含まれます。養育費も婚姻費用と同様,裁判所が作成した「養育費算定表」という早見表がありますので,それを参考にして決めます。

Q6 : 養育費の額を決めましたが,収入が減ってしまい,それまでの養育費を支払うのが厳しくなってしまいました。養育費の減額は認められるのでしょうか。

A :
認められる場合があります。収入の減少や再婚等,合意がなされた当時は予測できなかった事情の変更が生じたときは,まずはお互いに話し合い,合意が得られない場合には家庭裁判所に養育費減額の調停を申し立てることになります。

Q7 : 夫はサラリーマンで,私は専業主婦です。離婚後,私は,夫の年金を受け取れるのでしょうか。

A :
熟年離婚の場合,年金は大きな問題となります。公的年金には,誰でももらえる国民年金とサラリーマンがもらえる厚生年金(公務員の場合は共済年金)があります。国民年金は誰でももらえるので問題になりませんが,被保険者のみが受け取れる厚生年金・共済年金は問題となります。
年金分割の方法には2種類あり,一つは,「離婚時の年金分割」と呼ばれるもので,平成19年4月以降に離婚が成立した場合に夫婦の合意により年金分割の割合を決定する方法です。二つ目は,「第3号被保険者の年金分割」と呼ばれるもので,平成20年4月から施行され,第3号被保険者(サラリーマンの専業主婦など)の請求により一律に年金の2分の1が分割されるものです。

Q8 : 離婚に際し,慰謝料や養育費を支払ってもらうことに決めましたが,相手が支払ってきません。どうすればよいのでしょうか。

A :
強制的に相手の財産を差し押さえる強制執行という手段を取ることができます。強制執行の対象になるのは,@給与,A会社の売り上げ,B預貯金,C土地や建物などの不動産,D自動車などが考えられます。
【離婚後の生活】

Q1 : 離婚した後の私の氏と戸籍はどのようになるのでしょうか。

A :
婚姻によって氏を改めた配偶者は,離婚によって法律上当然に婚姻までの氏に復し,原則として婚姻前の戸籍に入籍することとなります。その結果,いわゆる「旧姓」に戻ることとなります。ただし,婚姻前の戸籍が除籍されている場合(父母ともに死亡している場合など)は,新たに戸籍を編成することになります。
このように,原則的には,離婚によって法律上当然に婚姻前の氏に復することになりますが,離婚の日から3ヶ月以内に「離婚の際に称していた氏を称する届」をした場合には,離婚の際に称していた氏を称することができます(婚氏続称)。

Q2 : 離婚した後,子どもの氏はどうなるのでしょうか。

A :
両親が離婚しても,子の氏は変更されません。子が親と氏を異にしている場合には,子はその親の戸籍に入ることができません。したがって,その親は,離婚の際に子の親権者となったとしても,子に自己と同じ氏を称させなければ,子を自己の戸籍に入れることができません。その子は,他方の親の戸籍に入ったままとなり,その戸籍上にもう一方の親が親権者である旨の記載がなされるにすぎません。そこで,氏を変更した親が,子を自己の戸籍に入れたい場合には,「子の氏の変更許可申立て」を家庭裁判所にする必要が生じます。